アルバイトのマリコは大学4年生で、只今卒業論文を執筆中である。 この間、半分程書いた論文が、パソコンがおかしくなり全部消えてしまったと言っていた。最近では、論文の事を考えるだけで嫌になり、好物のスイカ以外の物は喉を通らないそうである。重症である。マリコは真面目だからそうなるのだ。私などは酷かった。 私は大学時代、居酒屋でアルバイトをしていた。そこに、他の大学の先生であったが、私の専攻しているゼミを分野とする先生がたまに来ていた。 「卒論なんてどうすりゃいいのか分からない」と、その先生と話していると、「僕がアドバイスしてあげるから、研究室においで」と言われた。 一瞬、いかがわしい事を想像したが、その時の私は、人生の中で一番太っていた時だったので、「そんな事はあり得ない」と、早速先生の研究室へ赴いた。 一応テーマだけは、前もって先生に告げていたのだが、先生はそれを元に全て構想を練ってくれていた。「これはすごい」と私が驚いていると、先生は「こんな感じでやって行こう」と言って、また後日来るように言った。 後日訪ねると、先生が手書きで書いてくれ、第一章くらいまで完成していた。「これを自分でワープロで打ってね」と言われ、また驚いた。 「自分で考えなくていいのか?いいのだ!」と、一気に卒論が出来た気分になり気楽になった。それからは、2,3日に1回先生を訪ね、原稿を貰い、ワープロを打つという日が続いた。30枚くらいになった所で、「そろそろ終盤だな」と思っていたのだが、先生の原稿は終わる所を知らなかった。60枚くらいで、ただワープロを打つだけだが辛くなってきた。「いったい何枚書くのか」と思っていたら、ついに原稿は100枚まで行き、やっと終わった。 何も考えていないのに、疲れたのを覚えている。そして私は、その年の論文の賞を取った。当たり前である。本来ならば、かなり誇れる事なので、自慢して歩きたい所であるが、からくりがばれると困るので、あまり言わないでおいている。 頑張っているマリコを見ていると心が痛む。何事も一生懸命に取り組むのが一番である。 |
2005年9月14日水曜日
卒業論文
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