part1(2003.5.1 記)


この度、私は2月から1ヶ月間イタリアに行ってきた。それには、オーナーをはじめ、店のみんなの好意によって行かせてもらった経緯もあり、
さかのぼれば何故私がイタリア料理が好きになったのか等という事もあるが、それは次の機会にするとして、今回はこの2003年に私がイタリアに上陸して巻き起こした、数々の話しを何回かにわたって掲載したい。今回は、第一回目です。


この旅では、サンジェミニアーノ(トスカーナ州)にある「キリビ-リ」と、チェゼナ-ティコ(エミリアロマーニャ州)にある「アルガッロ」という店に行くのが一番の目的であった。両店とも、前回の旅で訪れた事があり、またオーナーが親しくしてるお店だという事もあり、厨房での仕事を見せてもらい、あわよくば手伝わせて頂こうという私の魂胆であった。


1人でイタリアに行くからには、イタリア語が多少なりとでも出来るのであろうと、みなさんお思いであろう。
御安心頂きたい。私はまったくもってイタリア語は出来ない。自慢して言う事ではないが。
出発前あたりには、会う人みんなに「イタリア語大丈?」と聞かれたが、「なんとかなるさ」と笑い飛ばし、実際本当になんとかなると思っていた。






千歳-成田-パリ-フィレンツェと乗り継ぎ、なんとか到着した。
フィレンツェの空港には、有り難い事に「キリビ-リ」のオーナーのアルベルトが迎えに来てくれた。
そこで私はやっと自分の愚かさに気付く事になる。なんと、と言うか、やはり、まったくアルベルトの言ってる事が分からない。
私は青ざめた。こんなんでこれから大丈夫なんだろうか?キリビ-リのみんなに挨拶したり、列車の切符を買ったり、ホテルの予約をしたり、てゆーかあたし列車の時刻表読めるんだろうか?!
一気に様々な思いがよぎり、ブルーになった。


アルベルトの好意で、仕事は明日からにという事になった。ホテルで休んだら、夕食をキリビ-リに食べにおいでと言われた。いや、言われたというのは、語弊がある。正確に言えば、紙に書いてもらったのだ。キリビ-リのみなさんも、あたしがイタリア語がチンプンカンプンなのをすぐに悟っ
たようであった。


ホテルではずっとイタリア語の勉強をした。
まずは相手が言っている事が分からなくては話しにならない。
この時本当に、心底、日本での自堕落な日々を悔やんだ。
翌日から仕事を手伝わせてもらった。
相変わらずイタリア語はわからないが、みんな親切に色々教えてくれた。
ちょうど冬で店が暇だったのもあり、ラッキーだった。


賄いと称して、「キリビ-リ」のメニューは全部食べさせて頂いた。中でも私のお気に入りは「鶏レバーのクロスティーニ」である。
私はレバーは大好きなので、レバー臭い等という事自体あまり気にならないが、これはレバー独特の臭みもなく、嫌いな方でもいけるのではないかと思う。
今ピアッツァでも日替わりメニューとして出しているので、是非賞味して頂きたい1品である。しかし、常時あるわけではないので御注意願いたい。



ある日、仕込みの最中に私はイタリアンパセリをちぎりながら「このくらいの量のイタリアンパセリは、日本では~ユーロくらいする」と言うと、みんな驚いた。
そしてごっそり手に持って、「イタリアではこのくらいの量でその値段だ」と言われた。
するとみんなこぞって、「じゃあ、リンゴはいくらだ?」「牛肉は?」等と、矢継ぎばやに質問してきた。
大概なんでも食べ物に関しては日本の方が高かった。
中でもみんなが一番びっくりしたのがメロンの値段であった。
普通のメロンは同じくらいの値段だが、はしりの夕張メロン等は1個数万すると言うと、「値段間違ってるだろ」と相手にしてくれなかった。
私はガンとして譲らず、「いや、間違ってない。でも普通の人は買わない」と説明すると、なんとなく理解した様子であったが、「正気の沙汰ではない」と言っていた。
確かにそうだ。私だってそう思う。


しかし私が1個数万のメロンと言って、みんなが信じてくれないのには理由があった。
それまでに私は数々の数字の間違いをおかしてるからである。
うちのオーナーの年令を40歳と言う所を14歳と言ってみたり、自分の月給を一桁多く言ってみたり、新車を15万で買えると言ったりと、ありとあらゆる間違いをしていたのだ。
その度に紙に書かれ、「ほんとにこれか?」と確認された。だからメロンも信じてくれなくて当然なのだ。



そして私は店以外の場所でもやらかしていた。
バールでカプチーノを飲んで、金を払わずに出てきたり(後であわてて払いに行った
が)、風呂の排水溝を溢れさせ、隣の部屋まで水浸しにさせたり(「白い恋人」を持っ
て、丁重に謝罪に行った)と、ほんとに迷惑な日本人であった。


そんな私の数々の愚行にも、イタリア人は優しく、寛大であった。
上手く話す事が出来ないので、感謝の言葉を手紙に書き、最後に「キリビ-リ」のみんなに渡した。
すると逆にまた、プレゼントをもらった。はあ~、とにかくかなわないと思った。
何回も別れを惜しみつつ、店を後にした。そしてまた必ず来ようと思った。
今度はもっとみんなと話せるようにイタリア語を勉強して。


帰りのバスで乗り継ぎがあるのだが、まんまと間違い、またサンジェミニアーノに舞
い戻った。自分のバカさ加減にびっくりした。


今回は、このくらいにして次回をお楽しみに!!

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